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最近よく「働き方改革!働き方改革!」という言葉を聞くようになりました。しかし実際は、「残業を少なくするのかな」や「給料が増えるのかな」、「働き方を変えるってことなのかな」など理解が漠然としている人が多いのではないでしょうか。
「働き方改革ってなに?」という質問にしっかり答えられる人、具体的な内容、そしてその先の目的まで理解している人は少ないように感じます。「働き方改革!働き方改革!」なんて言っている人が、その意味を正しく理解していなかったら何の意味もありません。
そこで、今回は働き方改革とは何なのか、その目的やメリット・デメリットを解説していきます。この記事を読み終わるころには、もう誰かに働き方改革について話したくなること間違いなしです!
働き方改革とは?
首相官邸によれば、働き方改革とは「一億総活躍社会実現に向けた改革」です。つまり、約1億人の人口を抱える日本において全国民が活躍できる、多様な働き方を可能にしようというものなのです。実際に首相官邸のWebサイトでも以下のようにまとめられています。
働き方改革は、一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジ。多様な働き方を可能とするとともに、中間層の厚みを増しつつ、格差の固定化を回避し、成長と分配の好循環を実現するため、働く人の立場・視点で取り組んでいきます。
また政府は、この働く人の視点に立った働き方改革の意義を3つ定めています。
さらに、今ある日本の労働制度と働き方にある課題とそれに対する改善策を以下のようにとらえています。
課題 | 正規、非正規の不合理な処遇の差 |
正当な処遇がなされていないという気持ちを「非正規」労働者に起こさせ、頑張ろうという意欲をなくす。 | |
改善策 | 世の中から「非正規」という言葉を一掃していく |
正規と非正規の理由なき格差を埋めていけば、自分の能力を評価されている納得感が醸成。納得感は労働者が働くモチベーションを誘因するインセンティブとして重要、それによって労働生産性が向上していく。 |
課題 | 長時間労働 |
健康の確保だけでなく、仕事と家庭生活との両立を困難にし、少子化の原因や、女性のキャリア形成を阻む原因、男性の家庭参加を阻む原因。 | |
改善策 | 長時間労働を自慢するかのような風潮が蔓延・常識化している現状を変えていく |
長時間労働を是正すれば、ワーク・ライフ・バランスが改善し、女性や高齢者も仕事に就きやすくなり、労働参加率の向上に結びつく。経営者は、どのように働いてもらうかに関心を高め、単位時間(マンアワー)当たりの労働生産性の向上につながる。 |
課題 | 単線型のキャリアパス |
ライフステージに合った仕事の選択をしにくい。 | |
改善策 | 単線型の日本のキャリアパスを変えていく |
転職が不利にならない柔軟な労働市場や企業慣行を確立すれば、自分に合った働き方を選択して自らキャリアを設計可能に。付加価値の高い産業への転職・再就職を通じて国全体の生産性向上にも寄与。 |
非正規雇用の待遇差改善、長時間労働の是正、柔軟な働き方ができる環境づくり。これらが働き方改革の3本柱です。どれも日本社会が解決しなければならないものばかり。しかし、これらの改善策が必要になるには当然理由があります。
というのも、ある問題が大きくなり顕在化したため、働き方改革を行わなければならなくなったのです。その問題とは、少子高齢化による労働人口の減少、長時間労働と過労死問題、労働生産性の低さです。言ってしまえば、これら3つの問題を解決することが、働き方改革の真の目的なのです。では、次にその目的である、3つの問題について詳して解説します。
働き方改革の真の目的とは?
これまでに述べた通り、働き方改革とは、一人ひとりの意志や能力、個々の事情に応じた、多様で柔軟な働き方を選択可能とする社会を追求していくことで、「労働者にとって働きやすい社会」を実現していくものです。
しかし、その背景には昨今日本で問題視されている少子高齢化による労働人口の減少、長時間労働と過労死問題、労働生産性の低さ、この3つと深い関係があります。ここではこれらの諸問題について解説していきます。
少子高齢化による労働人口の減少
出典:みずほ総合研究所
労働力を中核を担う生産年齢人口(15歳以上65歳未満)人口は、1995年を境に減少傾向にあります。現在6500万人にいる生産年齢人口も、2050年には4600万人まで減少すると予想されています。これによりに日本では人手不足が深刻化すると言われているのです。
加えて、生産年齢人口に該当する人々の中には、育児や介護により離職を余儀なくされる場合も決して少なくありません。このような状況下では、生産年齢に該当する人はもちろん、高齢者も含め、意欲のある人が幅広く労働者として活躍できる体制を作ることが必要になります。
またその一方で高齢者など意欲のある人に頼るだけでなく、限られた人員でも成果を出せるよう、業務の効率化や労働生産性の向上を実現することも大切です。
長時間労働と過労死問題
かつての「企業戦士」「モーレツ社員」という言葉通り、日本には、労働者が企業のためにすべてを犠牲にして労働することが美徳とされてきた企業文化があります。その最たる例が依然として改善されない「長時間労働」ですが、日本における長時間就労者の割合は世界的に見ても特に際立っています。
外国の方からは「働き過ぎて命を落とすなんてあり得ない!」と言われる描写を見たことはないでしょうか。外国には「過労死」という概念がない国もあり、”Karoshi”という和製英語が誕生するくらいです。日本ではおよそ3~4人に1人が長時間労働を強いられています。男女ともに諸外国と比較すると、高い数字になっています。
長時間労働に起因する過労死は、近年、件数として減少傾向にありますが、その数は依然として少なくはありません。働き方改革を通じて、企業における長時間労働の是正、働く人が健康で活躍できる就労環境の整備が必要なのです。
労働生産性の低さ
そもそも生産性とは、投入資源と産出の比率を意味します。数式で表すと、
生産性=産出(Output)/投入(Input)
となります。つまり、労働生産性とは「労働の成果(産出)」を「労働量(投入量)」で割ったもの、言い換えれば労働者一人あたりが生み出す成果、あるいは労働者が1時間で生み出す成果の指標なのです。そしてこの、労働者がどれだけ効率的に成果を生み出したかを表す数値である労働生産性は、国の経済成長に寄与すると言われています。
しかし、日本はこの労働生産性が高くありません。時間当たりの労働生産性は46.8ドルで、OECD加盟36ヵ国中21位。1人当たりの労働生産性も81,218ドルで、OECD加盟36ヵ国中21位と先進国では後れを取っています。
この労働生産性を高めるのには、労働者のスキルアップ・業務効率化、経営効率の改善が欠かせません。したがって、これらを遂行するため、働き方改革が必要なのです。
働き方改革のデメリットは?
ここまで働き方改革の実施の理由とその概要についてお伝えしました。少子高齢化による労働人口の減少、長時間労働と過労死問題、労働生産性の低さに対処するために、「長時間労働の是正、正規・非正規の不合理な処遇差の解消、多様な働き方の実現」を3つの柱に据える働き方改革が実施されています。
しかし、このような働き方改革もなかなか一筋縄にいかないのも事実。多くの改善を促す一方で、新たな懸念点も生まれています。
非正規雇用の待遇差改善 | メリット |
これまでは、非正規雇用労働者には能力アップにつながる教育訓練などを実施していないなど、非正規労働者を見ないしていない企業が多くあった。 働き方改革が進めば、企業はすべての労働者に対しキャリアアップ支援や有期実習型訓練を行っていくことになるので、非正規雇用者でもスキルアップや地位向上を期待できる。 また企業にとっても、非正規労働者が戦力アップすれば事業を拡大でき、利益拡大を期待できる。 | |
デメリット | |
非正規雇用労働者は、正規雇用労働者に比べると、賃金が安く、賞与や退職金の支払い対象外とされているのが一般的であるが、正規雇用労働者が増えることは、企業として「人件費」の負担が増えることになる。また、非正規雇用労働者を育成していく上で手間という負担も増えることになる。 |
長時間労働の是正 | メリット |
長時間労働の是正によって、労働者は健康リスクを減らすことができる。また、労働時間が短くなれば、プライベートの時間が長くなるので「豊かな人生」を送ることができる。適正なワークライフバランスを取り戻した労働者の労働意欲が向上する。「やる気」がある労働者が多い会社は生産性が向上するので、企業にもメリットをもたらすことが期待される。 | |
デメリット | |
少子高齢化による人口減少によって、建設、介護、飲食、運輸などの業界で人手不足が深刻化している。長時間労働が禁じられると総労働時間がますます減ってしまい、企業の競争力を弱めかねない。したがって、長時間労働の是正は、そのほかの働き方改革授業と並行して推し進める必要がある。 |
柔軟な働き方ができる環境づくり | メリット |
さまざまな事情から働きたくて働けるのに働けない人や、能力を発揮できる機会を与えられていない人がいる。テレワークなどを含むダイバーシティの考え方が推進されれば、企業にとっては優秀な人材の獲得やイノベーションの創出などのメリットがあり、働く側にとってもやりがいや収入が保障される。 | |
デメリット | |
女性・外国人といった属性の違いは勿論、物事の考え方、嗜好、価値観、宗教、LGBTなど、様々な多様性がある。ダイバーシティを推進していく上では、そうした差異を認めながら適切にマネジメントをして、企業の成長に結びつけていく必要がある。 |
まとめ
いかがでしたでしょうか。これであなたも働き方改革を知ることはできたのではないでしょうか。働き方改革の内容、実施する真の目的、そしてデメリットまで解説させていただきました。働き方改革は大手企業だけでなく、全企業の大半を占める中小企業にもその取り組みが求められます。
むしろ、そちらのほうが重要と言っても過言ではないくらいです。これからの働き方が未来の日本を変えるきっかけになるのです。